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Channel: テストライダーという仕事
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タイヤとサスペンションの関係(2)

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大変良いコメントをいただきましたので、回答させていただきたいかと思います(^^)
質問内容は「バイクユーザーはタイヤを換えるたびにサスペンションのセッティングを変える事はしない(できない)方がほとんどではないかと思うのです。現実そうであることはタイヤメーカーの方々も分かると思うのです。このタイヤは剛性が高めでつぶれにくいので、指定空気圧より0.1下げたほうがいいとかその逆とか。思うことはありませんか?セッティングありきの供給で、タイヤの質に触れない販売は不親切ではないのかなと、たまに思うことがあります。」
実はご指摘の通り、私ももっとユーザーにメーカーからとして告知活動を行った方がよいと感じる点は多々とは言わずとも、ないとわけではありません。T30のウエット記事に関連して触れますが、スリップサインもうそうですし、タイヤの経年劣化についてもそうです。オートバイはそこそこ乗れば自然と2年から3年で交換時期が来ますが、4輪は軽く4年も5年も乗るドライバーも少なくありません。
さて、タイヤの剛性についてですが、もちろん、「高め」そして「弱め」という考え方は当然設計時にはありますが、それでライダーが「このタイヤ硬いな」とか「弱いな」と感じるレベルのものではないとまずは申しあげておきます。Pilot Road2はかなり硬めの剛性を確保しておりますが、これは数多くあるタイヤの中でも極めて稀でもあり、その理由は、特定の領域の性能に特化しているからでもありますが、硬いからと言って空気圧を下げてしまうと、このタイヤが開発された目的を享受出来なくなってしまいます。
タイヤの剛性そのものは、タイヤを構成しているケーシング等によって左右されますが、基本的には、これはタイヤを製造する上でので大前提になるのですが、タイヤ剛性というのはエアボリュームで決まるものなのです。エアボリュームというのは、文字の通りタイヤの中の空気の量です。つまり、細いタイヤより、太いタイヤの方が剛性を容易に確保できるということなのです。大型バイクのタイヤが太いのはエアボリュームによって剛性を確保するためなのです
また、近年のタイヤの構造に多く共通することなのですが、ケーシングだけで剛性を確保するのではなく、空気圧によって剛性を高めている部分があるということなんです。これはどういうことかといいますと、タイヤの構造そのものが柔らかくなってきている傾向があるということなんです。つまり、空気圧が適正に保てていて初めてタイヤ設計時の基本性能が発揮できるということになっています。
また、0.1kg/cm2を空気圧を下げますと、逆に空気圧を上げてしまう結果になる場合になるということがあるのです。つまり、2.5kg/cm2だったのは2.4kg/cm2にして走行すると、2.6kg/cm2とかに簡単に上がってしまうことがタイヤメーカーでも確認されています。これは空気圧が下がることによってタイヤの動きが大きくなり、結果内圧が上がってしまうことに起因しています。
タイヤはサイズによってJATMAなどによってその空気圧が決めれられています。タイヤのサイズごとに空気圧の下限と上限があるのですが、それをどこにするかはオートバイメーカーが決めることなのですが、テストライダーが何度もテストを繰り返し、あらゆる使用条件を想定したうえで、一番適切だと思われる空気圧にするわけです。
もし、この時点でオートバイメーカーがタイヤが「硬い」と感じたのなら、タイヤメーカーには剛性を少し落とすオーダーが来ます。ここでもオートバイメーカーは「空気圧を下げる」という思想はありません。2.9kg/cm2でテストしていてタイヤが硬すぎと感じるから、じゃあ、指定空気圧を2.5kg/cm2にしようということにはならないからです。理由は2.9kg/cm2から2.5kg/cm2に落としてしまうと相当なレベルでタイヤ剛性が落ちてしまうからです。これはオートバイメーカーにとって非常に大きなリスクとなるのです。
それだけでなく、基本的に総合的なハンドリングというのは(タイヤの硬さも含めて)、タイヤだけではなく、ステム周りの剛性、フレーム剛性、そしてサスペンションの機能性などの車体側の要因も非常に大きく、A車に装着したときのタイヤの剛性感とB車に装着したときのタイヤの剛性感がまるで違うこともあります
ですので、タイヤが硬く感じるからと言って安易に空気圧を落とすのは決してお勧めできることではなく、逆に私が過去の記事でも何度も触れているように、サスペンション側の設定で容易に対処出来る問題であるのです。
オートバイのサスペンションのセッティングをしないライダーは大多数に及ぶと思います。オートバイのショップやディーラーの話をたまに聞きますが、サスペンションのセッティングをする人はまずいないというショップもいるぐらいです。
一度私は呆れてものが言えないほどのことがありました。それはある女の子がDucatiのモンスター900を新車で買って乗っていたのですが、私はある時ピンと来て、「それって買った時ディーラーからサスペンションのことについて話があった?」と聞いたら、何もないというではありませんか。そこで私が前後のサスペンションの調整をしてあげたら、「同じ乗り物とは思えない!ものすごく曲がる~!」と喜んで私に抱きついたほどでした。←、あ、ウソです(笑)。つまり、Ducatiのショップでも未だに女の子の体重とDucatiの設計体重すら考えることが出来ないところがあるということなのです。
今回ご指摘いただきました問題については、タイヤメーカーとして啓蒙活動をするのは必要なことではありますが、雑誌でもかなり昔からサスセッティングの特集記事などが掲載されており、ライダーなら必ず目にしているはずですし、サスペンションに調整機能が付いているのを知らないで乗っているライダーはいないと思います。ライダー側やショップの意識の問題も相当あると私は考えておりますが、このブログを始めたのも、少しでタイヤについて理解してもらえればとの思いからです。
タイヤは空気圧が命です。豊満なおっぱいが小さくなるほど悲しいことはありません。その機能を存分に発揮するよう、指定空気圧は遵守しましょう(^^)
 
 

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